ブコウスキー読むの初めて。
まず序文がかっこいい、「この作品はフィクションであり誰にも捧げられない」。
あと終わりもすごい好き。
「朝になると朝になってて、おれはまだ生きてた。
ひょっとしたら小説を書けるかも、とおれは思った。
そして書いた。(p292)
チナスキーの言葉はシンプルで多くを語りはしないけど、「書いた」という事実に全てが込められていて良い。
小説を書ける、と思うほどの人生の紆余曲折。
小説は基本的に何か(特に、悪いこと?)が起こることを前提としたもので、そういう人生のアップダウンを是としてくれるものがあるのは一つ救いになるな。
それにしても、社会人として読む、労働に関する小説は沁みる…。
GGの描写が切なすぎて涙出る。
配達しながら子どもにキャンディを配っていたら、子どもの母親から変態だと思われる。
上司はペコペコクレーム対応して、体裁ばかり気にする。
手紙の仕分けを間に合わせようと頑張っていたら、終了間際に無茶な量を追加される。
GGはそこに坐ったまま広告の束を眺めてた。
そしてうつむき、頭を両腕の間に入れると静かに泣き始めた。
おれは信じられなかった。(p65)
あの「いいやつ」、熱心な男は、地元商店が出した一束の広告の目の前で喉笛を切り裂かれた(p68)
人が労働/パワハラによって打ちのめされる描写あまりにも悲しい。
郵便って来る日も来る日も絶えないから徒労感がすごい。
ここの描写しんどいけど、なんかリアリティというか具体性があって好きなシーン。
あとGGを家まで送ってあげようとするチナスキーがめちゃくちゃ優しい。
チナスキーは、自分の彼女が飼い犬を蹴り飛ばしたときにも、犬に優しくしてあげたり、実は弱いものに優しい。
他の人の感想などを聞いて確かにな〜と思ったところなど
・自分に起こっていることへの距離感。いいことも悪いことも淡々と書かれている。アップダウンを真正面から受けることはしんどい。
・チナスキーは本当はズタズタでもクールっぽい感じにしている。うまく行きそうになるとぶち壊しちゃう。
・なんで全然幸せになれないのかとか、実は真面目に考え続けてる。読みながら一緒に悩む感じ。
・基本的に簡潔な文章なのにたまにセリフが長いところがあったり、その緩急が面白い。
・出来事と出来事の間が空いてて、気づくと他の女性と付き合っている。
・必ず負ける。できるだけ華々しく負ける。でも死なない。
コメディタッチというかユーモラスというかおかしな部分も大いに笑ったし、ジーンとさせられるようなところもあるし、とっても面白かったな〜
人生はしんどいものという気持ちがベースにあるので、キツくてギリギリの人の話を読むことによって救われる部分がある。
本当にキツいときは真正面から向き合えないとかも、そうだよな〜と思う。
あと、会社辞めるときはあれくらいめちゃくちゃなことまくしたててやめたい、絶対できないけど。